従来、狭心症の原因となる冠動脈狭窄を精査するためには冠動脈造影を必要としていました。しかし、冠動脈造影は動脈経由の検査であるがゆえに少ない可能性ながら合併症(血腫形成、動脈損傷、脳梗塞)の危険性は考慮すべき検査でした。冠動脈を治療する上には必須の方法ですが、検査だけであれば非侵襲的検査に置き換えることが望まれてきました。このような背景から近年64列CTを用いた冠動脈検査が広く普及するようになってきました。当院でも2005年1月より冠動脈CT検査を始め、2500例を越える検査を行ってきました。検査目的としては、冠動脈疾患のスクリーニング・急性冠症候群の原因となる血管壁イメージング(危険なプラークの発見)・冠動脈治療前のマッピング画像として・冠動脈治療後の経過観察として・バイパス治療後の経過観察として・胸痛時3大病変除外(虚血性心疾患・大動脈解離・肺動脈血栓塞栓症)プロトコールとしてなど多岐にわたります。
図1に示すように微少狭窄の検出も可能で、また当院のCTではbeat to beat delay algorithmという独自の再構成法にて不整脈にも強く図2のごとく心房細動時にも高い検査成功率をあげています。さらに近年、冠動脈CT時の被曝が問題視されることがありますが、当院ではもともと低線量でかつ、脈拍が安定している方にはstep & shoot cardiacという撮像法で胸部CTの約半分の低線量で検査を行う撮影法も取り入れています(図3)。非侵襲的冠動脈撮像と言えば、やはり非造影MRIに優るものはないと考えられます。検査時間がCTよりも長い・検査成功率がCTよりも低いというデメリットはありますが、造影剤不要・被曝なしであり非侵襲的に冠動脈の検査を行うことが可能です(図4)。
特に幼児の川崎病精査時(息止め不要)や冠動脈高度石灰化(CTは高度石灰化に弱い)時にはCTよりも推奨される検査です。しかもMRIであれば心筋の動き(シネ撮像)や心筋viability検査・急性心筋梗塞イメージング(3枝病変時の責任病変の特定・梗塞心筋の予後推定)・虚血診断(perfusion検査)を行うことも可能です。
大動脈検査においても、非侵襲的検査は有効です。64列CTの導入で大動脈弓部から下肢動脈までというかなり広い範囲でも高分解能撮影が容易に可能となりました(図5)。
非造影MRAでは撮影範囲が胸腹部もしくは下肢全体と制限されCTよりも若干検査精度が低下しますが、高度石灰化や造影剤が使用できない場合などに当院では積極的に撮像しています(図6)。MRIを用いた拡散強調画像の有用性が近年多く報告されるようになってきました。拡散強調画像は造影剤を用いず被曝もなく非侵襲的に異常部位を検出する方法です。広い範囲において悪性病変のおおまかな除外(早期癌や異常信号を呈さない例外の悪性病変があるという点において)・悪性病変の活動性経過観察
(図7-1,2は治療前, 図7-3は治療後, 治療効果が良好であることが明瞭です)・不明熱時における膿瘍検出(図8)など有用性は高いと考えられます。 昨年、当院を含む多施設研究において、手術を必要とする大腸癌およびコントロール群でいずれも95%以上という高い感度・特異度・正診率で、有用性が示されました。64列CTでは広い範囲を高分解能で撮影することが可能であり、さらに容易に冠状断や矢状断を作ることも可能となり、臨床的に有用な検査です。ところが近年の腹部MRIの進歩は特筆すべきものがあります。MRCPにおいては、呼吸同期技術の向上で検査成功率は98%以上で、腹腔鏡下胆嚢摘出術前においてもほとんどの場合は胆嚢管を始めとした胆道の解剖が描出可能です。
また従来MRCPでは苦手であった濃縮胆汁(図9-1)においてもbalanced法を用いて(図9-2)濃縮胆汁においても明瞭に胆道を描出することが可能となりました。現在では胆道・膵画像診断はMRIがfirst choiceと言えます。肝臓腫瘍性病変(肝細胞癌や転移性肝腫瘍を初めとする)においてもEOB造影剤の導入およびそれに最適化した撮像法により従来とは比較にならない情報量の多い検査となりました(図10)。 現行では当院では肝臓CTのほとんどがMRIに置き換えられています。また病変描出感度の高い拡散強調画像を含めて様々な応用を行っています。 (図11)のように大腸癌術後経過観察中のMRI拡散強調画像では、CTでは見逃されがちな周囲臓器と同濃度の局所再発病変や転移病変の拾い上げに威力を発揮します。さらに大腸癌術前プロトコールでは腹部全体を拡散強調画像およびT2強調画像にて転移検索を行い、これに大腸癌部分の高分解能T2強調画像(局所進展精査)・肝転移検索のEOB検査を含めて1回で精査から拾い上げまで行うことを可能としました。肺野病変は言うまでもなく多列CTの有用性は高く、数秒の息止めで全肺野1mm以下の分解能で画像を取得することが可能です。これにより精査のための再撮像を行う必要がなくなり被曝低減の点からも有効です。さらに全例において必要により容易に冠状断や矢状断を作成可能で診断能向上に寄与しています。
(図12)では葉間に沿った播種性病変は通常撮影ではわかりづらいですが、冠状断・矢状断で明瞭となった例です。また非侵襲的手術としての胸腔鏡下手術が当院でも積極的に行われていますが、その際に一般的には腫瘤部位のマーキングとして術前に留置針や色素注入が行われています。当院では非侵襲性を重要視していますので、術前に3D-CTによる非侵襲的なmappingを行い(図13,14)、安全で正確な胸腔鏡下手術を行っています。
骨盤領域特に泌尿器領域においてはMRIの有用性は広く認められているところです。当院でも早くから術前精査として導入してきました。特に前立腺癌検出および深達度診断においてMRIの有用性は特筆すべきものです。従来、内腺癌の検出能が低く、外腺癌においても非典型例では診断に悩む場合も多く経験しました。ところが特に拡散強調画像の出現により診断能は一変し、前立腺癌の大部分が拡散強調画像にて”光る”ことがわかってきました。この”光る”拡散強調画像での異常信号とT2強調画像の融合画像(fusion画像)を作成することにより、精度の高い診断が可能となりました(図15,16)。
さらに当院での400例の検討では、拡散強調画像の異常信号の程度によりグリソンスコア(組織悪性度)が明確に相関することが統計的にも確認され、治療法選択にも有用性が高くなりました。前立腺癌深達度においては高分解能T2強調画像を撮像することにより診断能が上がっています。膀胱癌(図17)においても、拡散強調画像はほとんどの例で”光る”ことから微小病変の拾い上げおよび病変の除外でも有効です。膀胱癌においても高分解能T2強調画像において微小病変描出に有効であることが経験されます。
整形外科領域でも特にMRIは著しい進歩がありました。特にVISTA法と呼ばれる高分解能T2強調画像です。この撮像法はXYZ軸に対して同じ分解能を持つ3D撮像であり、撮像後どのように切り直してもきれいな画像を取得可能というものです。特に脊椎病変において、従来では見逃されることもあった側方狭窄例でも正確な診断が可能となりました。
(図18)では、この撮像法から再構成した椎間孔画像にて明瞭な椎間孔狭窄が描出されています。膝関節でも同様に高分解能撮像のT2WIで靭帯を、プロトン強調画像で半月板を詳細に観察することが可能となり、微小損傷においても診断能が上昇しています。また皮膚科領域にも当てはまりますが、軟部腫瘍の診断能がマイクロスコピーコイル(顕微鏡コイル)を使用することにより向上するようになりました。
(図19)では、ガングリオンの精査における通常コイル(図19-1)とマイクロスコピーコイル(図19-2)を使用したものです。病変描出能の違いは明瞭です。また皮下異物のような例でも威力を発揮します。 (図20-1)と(図20-2)は異なる例ですが、いずれも異物(とげのようなもの)がこのコイルを用いることにより明瞭に描出されました。当院では、上記のような非侵襲的検査による正確で迅速な診断を目指しています。CTおよびMRIいずれも基本的に当日検査に対応可能(やむを得ない場合のみ翌日をおすすめすることがあります)で、当日報告書を作成しています。冠動脈検査等の画像処理を必要とする検査のみ、当日夕方に報告書作成(郵送の場合は翌日発送)となります。当院のCT室にお電話にて簡単に予約をとることが可能です。可能な限り最新の撮像法を取り入れ、臨床に活用して頂ける環境としていますので、積極的にご活用下さい。
































































